ジーコのこと

 彼を神格化する気はない。
 ことワールドカップにおける実績に限れば74年ベスト4の鬼軍曹エメルソン・レオンと大差ない(彼はGKだが、74年のブラジルは「スイーパー」のルイス・ペレイラを中心としたデフェンシブなチームで、7試合で6得点4失点という結果だった)。監督としての実績は言わずもがな。
 思い出すのはジーコの僚友で「黄金の4人」の一人、ファルカンが監督をしたときの協会のクールな対応だ。
 レオンのいたセレソンで10番をつけていたのは、エスパルスのサポーターなら思い出したくもないだろうロベルト・リベリーノ。全く経験なしにトップチームの監督を引き受けた点と、現役時代の華々しさはジーコに似ている。
 意地悪な言い方だが、ジーコは自分がリベリーノとは違うということを十分に証明したとは云えない。
 もちろん、私はジーコをプレーヤとしてもマネージャーとしても高く評価し、尊敬している。選手としてならともかく、チームスタッフとしてのジーコリベリーノと比べるのは失礼な気がする。
 元々過大な期待を抱いていたわけではないから、それほど落胆しているわけではないが、いまはただ、どのような形にしろ(僥倖だろうが何だろうがかまわない)最終予選には進んで欲しいと思う。オマーンの後塵を拝したら、かなり寂しいことになる。
 今はただそう思うだけだ。